2013下半期
好きなライトノベルを投票しよう!! 用エントリ。
『葵くんとシュレーディンガーの彼女たち』渡会ななみ,もぐも(電撃文庫)【13下期ラノベ投票/9784048919463】
量子論や多世界解釈というようなことを絡めた良質な青春SFラノベ。とはいえ小難しい話はあまりないのでご安心を。
寝るのが大好きな高校生・葵は、隣の家のカーテンが水玉かストライプかを確認することから1日が始まる。眠ると別の世界に飛ばされてしまうからだ。
ヒロインはカーテンの主、幼馴染である。これに関して確率が重なり合っているということはない。どちらも幼馴染。つまり、シュレーディンガーの幼馴染ヒロイン[完全版]である。幼馴染ヒロイン大勝利。
ラノベなSF好きには勿論、幼馴染ヒロイン好きにもオススメしたい1冊。
『エスケヱプ・スピヰド 伍』九岡望,吟(電撃文庫)【13下期ラノベ投票/9784048661232】
映画張りの激渋表紙からの、裏表紙は遂に《甲虫》勢から鍬形! かわかっこいい!!
そんな鍬形の乗り手である朧を始め、過去から現在に繋がっていき、復活する蜂と蜻蛉によって、更に加速する神速バトルアクション。面白すぎだぞエスケヱプ・スピヰド!
あと、口絵の竜胆・巴・剣菱を見るだけで幸せな気持ちになる……からの本文157頁。吟さん気合い入り過ぎや……! 早く続き読みたし。
『王子降臨』手代木正太郎,mov659(ガガガ文庫)【13下期ラノベ投票/9784094514230】
時は戦国、戦と飢饉によって荒れ狂う乱世に金髪碧眼の王子、降臨……!
ある意味ではそれだけの作品である。しかし、これほどドラマティックに、これほどエモーショナルに、そしてこれほど美しい作品があっただろうか、いy
第7回小学館ライトノベル大賞優秀賞受賞作品。山田風太郎的な世界観、コミカルながら妙に重厚なモノすら感じさせかねない背景、そして、王子降臨。この組み合わせが何故かわからないがとんでもない魔法を生み出している。
ヒロイン(?)の鳶丸はものすごく可愛いし、脇を固めるキャラもとても魅力的。
『密葬 ―わたしを離さないで―』江波光則,くまおり純(ガガガ文庫)【13下期ラノベ投票/9784094514377】
『鳥葬』の続編。
陵司が同級生・真琴にモップで殴りかかって停学になったことから始まる青春小説。
真琴という人間、停学免除を釣り餌にある提案をする左翼教師・間宮……歪んでいく日常に、過去に、人間関係に、陵司は更に向き合うことになっていく。
どういった色の作品でも失わない読者を惹き込む江波作品の引力が、目を背けたくなるような感情や心情を読者に刻みつけてくる。ラストシーンは何でもない場面だけど、こんな風に描かれた作品だからこそ、心に響く。
……それにしても、間宮先生怖すぎる……!
『王子降臨 2 王子再臨』手代木正太郎,mov659(ガガガ文庫)【13下期ラノベ投票/9784094514421】
相変わらず凄いの一言。
なんでこんなに凄いのだろうとわからずに悩むこともあるけれど、最終的には「王子だからである」と考えられるようになる。これが読者に成立してる時点で、この作品は何をやっても面白くなってしまう。
あと、イラストのmov659さん、いい仕事し過ぎです。桃の花と王子な48頁とか、少年図と呼びたくなる55頁とか、見所は多いけど、圧巻は189頁。男子向けラノベでこれを成立させる豪腕。だがそれがいい。
3巻が楽しみ過ぎです。
『殺戮のマトリクスエッジ』桜井光,すみ兵(ガガガ文庫)【13下期ラノベ投票/9784094514483】
男の子向けサイバーパンクアクション満載な作品。
ゲームのライターである桜井光さんのラノベデビュー作とのことだけど、それ故なのか情景が浮かびやすい描写が個人的に◎。SNSや掲示板のログ、ニュースなどを使った状況説明的な部分はとてもハマっていたように思う。
何より好きなのは、もう一人のヒロイン、ユーノのパート。直球で男の子向け! なこの作品において、絶妙な薬味になっていると思います。
続刊がとても楽しみ。
『デスニードラウンド ラウンド2』アサウラ,赤井てら(オーバーラップ文庫)【13下期ラノベ投票/9784906866274】
血と硝煙と秋刀魚を焼く煙が煙るライトノベル!
凄惨なバトルシーンと、時間によっては凄惨な食事シーン。秋に秋刀魚は反則やろ……!
2巻で登場するマスコットキャラクターは警視庁のアレ。のっけから彼の凄惨な殺戮シーンから始まるわけですが……まぁよく考えたら、あのラリってる表情とドハマリしてるというかw
そして、主人公・ユリと、今回出てきた美鳳、前巻でも出てきた宇佐美のイチャイチャに癒される。ガンアクションご飯百合ライトノベル! 最高や!
『クレイとフィンと夢見た手紙』友野詳,スオウ(MF文庫J)【13下期ラノベ投票/9784840154109】
2人の郵便配達人によって届けられる、つぎはぎな世界の手紙の物語。
2人の男子に飾られた表紙が印象的なこの作品ですが、やはりこの2人が魅力的。自称頭脳労働担当のフィンと、そのフィンに肉体労働を押しつけられるクレイ。珍しくない関係性だろうけどやはり楽しい。
また、形式として5編の短編で成り立っているのだけど、短編小説的な軽さを持ち合わせつつ、巧くつぎはぎの世界を繋げていて、いいとこ取りをしている。ズルいw
2巻が近日出ました。読むのが楽しみです。
『後宮楽園球場 ハレムリーグベースボール』石川博品,wingheart(スーパーダッシュ文庫)【13下期ラノベ投票/9784086307673】
「女装少年出仕」から幕を明け、「女装少年出世」で幕を閉じるお話。
女子ばかりの場所に見目麗しい女装少年が侵入するというパターンは特段珍しいというわけではない……が、その先で(しかも後宮で)野球をやるという意味がわからないw
意味はわからない。わからないが、とんでもなく面白く、熱い。
彼女たちの白球に懸ける情熱が、上を目指す野心が、交錯する感情と思惑が、読み終わると後宮の宮女は野球をして過ごしていたのだ、そう思ってしまう、まである。
『ヴァンパイア・サマータイム』石川博品,切符(ファミ通文庫)【13下期ラノベ投票/9784047290112】
昼の世界を人間が夜の世界を吸血鬼が主として暮らす世界。
吸血鬼が怪物とかではなく、まるで昼間の高校生とその夜間部の生徒くらいの感覚で表現される。その中での人間である頼雅と吸血鬼である綾萌の恋愛模様が紡がれていく。
頼雅と綾萌の視点をバトンで繋いで、感覚と感情がそのズレが交錯しながら物語に乗せられ、人と吸血鬼との恋愛が(読者も)あたかも普通の恋愛であるかのように錯覚する。そしてそれ故のラストに心臓を掴まれた感覚。
最後は色々な捉え方があるとは思うけど、後を引く読後感でとてもよかった。タイトル通り、夏に読みたい気分がする本。